
屋根のカバー工法とは「重ね葺き(かさねぶき)」とも呼ばれている工法で、既存屋根の上に新しく屋根を造り込む工事方法です。
現状がスレート屋根(コロニアル)の場合に多く採用されており、軽量の金属屋根(ガルバリウム鋼板)仕上げるのが一般的です。
既存屋根の撤去・処分費用が浮くほか、工事期間も短縮できるので人気の高い工法といえます。
カバー工法と葺き替えの違いを理解しよう!
屋根修理でカバー工法を選定する際には、一般的な葺き替えとどのような点に違いがあるのかを理解しておきましょう。
カバー工法では屋根が二重になるのに対し、葺き替え工事は既存の屋根をすべて撤去して新しい屋根に交換します。
では、どのような点で葺き替えはメリットがあるのかというと以下の3点です。
1、下地から修理することができる
2、屋根の重量が増加しないので耐震性も万全
3、仕上げの屋根材の種類を自由に選べる
一方で、下地の工事や既存屋根の撤去・処分などがあるので工事費用が高額です。
また、工程もカバー工法より多いため、工事期間が4日ほど長くなってしまうデメリットがあります。
要するにカバー工法も葺き替えも個々にメリットデメリットがあるので、どちらが最適な工事方法なのかを適切に判断する必要があるということです。
知っておきたい屋根カバー工法の種類

屋根のカバー工法には、以下の2種類が存在します。
1、防水性能が向上するカバー工法
2、美観目的のカバー工法(接着工法)
どちらもカバー工法と紹介されているケースがあるので、混同しないように注意しましょう。
それでは、各カバー工法の中身について詳しく解説します。
防水性能が向上するカバー工法
主流のカバー工法は、防水性能が向上する工事方法になります。
既存屋根の上に「防水シート(ルーフィング)」を施工した上で、軽量の金属屋根を葺いていきます。
仮に現状の屋根に施工されている防水シートに亀裂や劣化があったとしても、新たに防水シートを施工することで防水機能が向上するというわけです。
仕上げに金属屋根(ガルバリウム鋼板)で仕上げることで、防水性・美感性とともに向上するカバー工法になります。
美観目的のカバー工法(接着工法)
近年、新しい工法として登場したカバー工法が「重ね張り(接着工法)」という種類です。
具体的な例をひとつあげると、外装材メーカーのケイミューから発売されている「リコロニー」という商品があります。
この商品の特徴は、既存の屋根を生かして金属屋根を新しく取り付けるものですが、重要なポイントは防水シートの施工がない点です。
直接金属屋根を貼り付けるので工事期間や費用も短いメリットがありますが、仕上げ材を施工するだけなので防水機能は向上しません。
あくまで美観目的のカバー工法なので、防水機能が向上するカバー工法と混同しないように注意しましょう。
屋根工事でカバー工法を採用するメリットは4つ!
さまざまな工事方法がある中で、カバー工法を採用するメリットは以下のとおりです。
1、撤去・処分費用を抑えられる
2、工事期間が短い
3、機能性(断熱性・防音性)が向上する
4、アスベスト対策も万全
ここからは各メリットを詳しく解説します。
①撤去・処分費用を抑えられる
屋根カバー工法の大きなメリットは、既存屋根の撤去・処分費用をカットできる点です。
現状の屋根を生かして施工するため、葺き替えのように撤去費用や処分費用をかけずにメンテナンス工事することが可能です。
そのため、屋根修理の費用をできるだけ抑えたいという方は、葺き替えよりもカバー工法が適していると言えるでしょう。
②工事期間が短い
葺き替え工事の場合、既存の屋根を撤去するのに数日期間が必要です。
しかし、カバー工法では撤去工事が必要ないので、全体にかかる工事期間を短縮することができます。
また、既存屋根の撤去をするとチリやホコリが多く発生しますが、カバー工法では出ないので居住者や近隣への負担も少なくて済みます。
工事期間も短く負担が少ないので、カバー工法にするメリットは大きいでしょう。
③機能性(断熱性・防音性)が向上する
屋根にカバー工法を採用した場合、防音性や断熱性といった機能性が向上します。
機能性が向上する理由は以下のとおりです。
- 屋根が二重になる
- 断熱一体型屋根材の活用
カバー工法では既存屋根と新しく造り込む屋根で二重になるので、雨音の軽減や断熱効果の向上につながります。
その他にも仕上げに断熱一体型の屋根材を採用することで、遮音性や断熱性は向上します。
④アスベスト対策も万全
古い住宅のスレート屋根には、アスベストが含まれているケースがあります。
アスベストが含まれている屋根材は撤去や処分費用が高額になるため、屋根工事全体予算にも大きく関わってきます。
一方で、カバー工法を採用した場合、屋根材の撤去や処分が必要ないためコスト面でも安心です。
また、屋根が二重になることでアスベスト含有の屋根材を閉じ込めることができるので、周辺環境に影響が出ることもありません。
屋根カバー工法を採用するならデメリットも把握しよう!
屋根にカバー工法を採用した場合のデメリットは以下のとおりです。
1、屋根の総重量が増える
2、採用できない屋根もある(瓦・下地不良)
カバー工法を検討している方は、これらのデメリットもきちんと把握しておきましょう。
それではカバー工法のデメリットについて解説します。
①屋根の総重量が増える
葺き替え工事の場合、現状の屋根を撤去してから新しく屋根を作るので屋根の総重量は増えません。
むしろ、重い瓦屋根から軽量な金属屋根に交換した場合などは、総重量が減るケースもあるでしょう。
一方で、カバー工法では既存屋根の上に屋根を造り込むので、ガルバリム鋼板のような軽量な材料を使用しても総重量は増加します。
屋根重量は軽い方が耐震性の観点からも良いため、総重量が増える点はカバー工法のデメリットと言えるでしょう。
②採用できない屋根もある(瓦・下地不良)
葺き替え工事の場合、屋根の状況や種類に関係なく工事することができますが、カバー工法は採用できない屋根もあるため注意しましょう。
具体的には、以下のような屋根に採用できません。
- 瓦屋根
- 下地が腐食・劣化している屋根
カバー工法は下地が平滑でなければならないため、瓦屋根のように動いてしまう下地には採用できません。
また、カバー工法は既存屋根の下地を再利用する形になるので、雨漏りで下地が腐食している場合についても採用することはできません。
屋根カバー工法の手順と費用相場【スレートから金属屋根の事例】

1、既存で設置されている棟板金の撤去
2、防水シート(ルーフィング)の施工
3、役物板金の取付工事
4、金属屋根(ガルバリウム鋼板)葺き
5、棟板金の取付工事
スレート屋根(コロニアル)から金属屋根にカバー工法を行う場合、大まかに上記の5工程で工事を進めていきます。
基本的にカバー工法では軽量の金属屋根を使用しますが、なかでも断熱一体型は防音性や断熱性が向上するためおすすめです。
まとめ
今回の記事では、昨今の主流の工事工法になりつつある「カバー工法」について詳しく解説しました。
記事の要約は以下のとおりです。
- カバー工法は既存屋根の上に新しく屋根を作る工事
- カバー工法には2種類ある(防水目的・美観目的)
- カバー工法は撤去処分費用を圧縮できて工期も短い
- 屋根が二重になるので断熱性と防音性が向上する
- アスベスト対策にもなる
- 屋根の総重量が増えるのはデメリット
- すべての屋根に採用できる訳ではない
下地に問題がない屋根ならば、葺き替え工事よりカバー工法の方がメリットが多い傾向にあります。
是非、ご検討、ご相談ください!